Q. 専門学校やスクールがやってる日本語教師養成420時間講座と、大学にある日本語教師養成課程(日本語教育の専攻/副専攻)の違いは何ですか?
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A. 以下のような「同じ」部分と「違う」部分があります。
学習内容(座学)は同じ
学習内容は基本的には同じです。元々が同じだからです。
- 一昔前、(日本語教師にも多様性が求められるようになり)大学以外でも日本語教師を養成できるようにするために民間の日本語教師養成講座を作ることになった
- その際に参考にした大学での日本語教育の履修課程の最少単位数が「420時間」程度だった
- それを元に民間で講座を作ったので日本語教師養成「420時間」講座となった
・・・というような背景があります。
そのため、特に座学の部分は、どちら(講座も大学での専攻)もこちらの文化庁のシラバスで指針されているような項目を学習します。
但し、カリキュラム構成等は違いますので、大学と民間の講座間では単位の互換性はありません。(大学で何単位が途中まで履修して挫折したからといって、その分を後で養成講座で単位相殺する・・・といったこと、またはその逆はできません。)
違い
(1)実習部分の量と実践性
一番の違いは教育実習部分です。民間の日本語教師養成講座は、日本語学校が並立されていることもあり、講座受講者はその日本語学校等で実習できることが多いので、民間の日本語教師養成講座のほうが実習部分が充実している傾向があります。
多くの日本語教師が働くことになるであろう日本語学校で実習を積める・・・というのはその後の就職時の評価にも関わってきます。
一方、大学での専攻の場合、実習は同大学の留学生相手に形だけの実習が組まれていたり、と教育実習部分が弱い傾向があります。多くの日本語教師の主な就職先である日本語学校の客層(生徒の層)と異なるため、大学での専攻の場合、なかなか現実的な教育実習経験が積めないことが多い傾向があります。
大学の中には外部の日本語学校と提携して、その日本語学校にてお客様的に実習を積ませてもらえるところもありますが、実習時間数が少なかったりと、やはり弱いところがあります。
(2)最新情報の反映性
民間の日本語教師養成講座は、講座の運営自体が「命」だったりしますので、(もちろんすべての講座がそうとは限りませんが)比較的、最新の日本語教育事情や情報を、柔軟かつ迅速にカリキュラムにフィードバックしやすい傾向があります。
一方、大学は他学部もある大所帯ということもあり、カリキュラムや講師の入れ替えが容易ではありません。中には自分の研究のためだけに仕方なく学生にレクチャーしている部分もありますので、民間が実践的であるのにたいして、大学は学術的・牧歌的・普遍的なカリキュラム内容が続く傾向があります。
(3)履修速度
大学のほうは2年くらいかけて履修するものが多いのに対して、民間の日本語教師養成講座は、それだけを集中して履修するので、早いコースでは半年程度以内で修了できるものがあります(長いコースでも通常は1年程度以内で修了するものが多い)。
そのため、大学で長い時間かけてダラダラ学習するよりも、日本語教師養成講座で半年~1年以内に集中して効率的に学習したほうが「鉄は熱いうちに打て」で学習効果も高い傾向があります。
(4)講座修了は「資格」にならない場合も
法務省告示の日本語教育機関で働きたい場合は、告示基準において、
- 四大卒以上+文化庁届出受理の日本語教師養成420時間講座
がワンセットとして資格要件と指定されているため、四大卒に満たない方が、せっかく文化庁届出受理の日本語教師養成420時間講座を受講しても、法務省告示機関での資格とはならないという落とし穴があります。
(5)就職時の評価(効果)
以上のような事情から、「四大卒以上」の要件を満たしている場合は、就職時の資格としての効果は、民間の日本語教師養成420時間講座のほうが、大学での専攻よりも評価される傾向があります。→日本語教師の資格はどれが有利か
日本語学校をはじめとして、日本語を教える機関はどこも小規模な所が多く、経営的・人的にも余裕はありません。そのため、どこも経験豊富な即戦力となる人材を欲しています。
また、日本語教師は日本語を教えればよいだけでなく、日本社会についても、自らの豊富な経験から説得力を持って学習者に教えていかなければなりません。そのため、日本語教師の業界は中途採用市場であり、新卒には不利な傾向があります。
理想は(まとめ)
以上をまとめると、理想としては、日本語教師は、
- 最低でも四年制大学(専攻は不問)を出た後、(←今後、国内でも日本語教師は最低でも四大卒以上はますます必須になってきます。海外でもビザ取得に四大卒が求められます。)
- 3年~10年は社会経験を積んで日本社会を学び、ある程度の貯蓄もした上で、
- 30歳前後で、民間の日本語教師養成420時間講座に通い、
- 講座修了からそれほど間を置かずに日本語教師として就職する
・・・といった流れが理想的と言えるかもしれません。もちろん個人差があることではありますが、参考にしていただければ幸いです。