このページでは、オーストラリアで日本語教師になる方法などを勤務先のパターン別に、実際のモデルケースや、アルバイト・フルタイム、待遇・給料・資格・求人などの情報を紹介しています。
目次
オーストラリアの日本語教育の実状
オーストラリアで日本語教師になるには、まずはオーストラリアの日本語教育の実状の全体像を把握しておく必要があります。
オーストラリアの日本語学習者数はこちら今後、日本語教師の需要と将来性がある国の表でも記載してある通り、世界第4位ではありますが、4位だからといって、世界で4番目に「日本語教師になりやすい国」というわけではありません。この学習者数にはカラクリがあるので内訳に注意が必要です。

と言いますのも、オーストラリアのこの日本語学習者は単に、オーストラリアの小・中・高校などで第一または第二外国語として「なんとなく」日本語を選択している子どもが多い、というだけで、オーストラリア人の大人が民間の語学学校などでお金を払って日本語を学んでいる数字ではないのです。(そこがアジアの日本語学習者数内訳と異なります。)
そして日本語を選択している生徒は低学年に集中しており、どの学校も学年が上がる毎に、「日本語ではテストで高得点が取れない」ため、日本語学習から離脱していきます。
例えば1つの学校で、日本語学習者が低学年の頃には100人いたとしても、卒業する頃まで学習し続けている人数は5人以下程度に減少してしまっているのが、オーストラリアのどの学校でも共通の傾向なのです。
まとめると、オーストラリアで日本語学習者がいるのは小中高校がほとんどであり、そこで日本語教師として働くには実質、オーストラリアの小中高校の教員になるしかなく、非常に門戸が狭いということになります。
(オーストラリアの教員免許が必要であり、「420時間」や「検定合格」はあまり関係ありません。)
つまり、オーストラリアでも数字上の受動的な日本語学習者数はあっても、能動的な学習者(お金を払ってまで日本語を学習したい、という人)はほとんどいない・・・よって、「履歴書を持っていけば雇ってくれる語学学校がある、という就職活動のイメージ」はあまり成立しないのがオーストラリアでの日本語教師事情です。
オーストラリアで日本語教師になる方法
以上のような厳しい現状の昨今ですが、そんな恵まれた(恵まれていた)環境のオーストラリアでも、日本人だから即、日本語教師になれるわけではないのは今も昔も変わりません。
オーストラリアで「日本語教師」として働くには、大きく分けると次の3種類になります。
「どこで日本語教師として働くか」
- (A)公立・私立の小中高校などの初等・中等教育機関←日本語学習者はここにいる。
- (B)大学などの高等教育機関←ポジションも需要もあまりない。
- (C)民間の語学学校←あまり需要も就職口も無い。
オーストラリアは、世界の中でも比較的日本語教育はさかんなほうですが、上記A~Cいずれのパターンでも日本語教師になること、そして日本語教師だけで生計を立てるのは簡単ではありません。
以下、A~Cの順に、オーストラリアで日本語教師になる方法をまとめていきます。
(A)公立・私立の小・中・高校など初等・中等教育機関でなるには?
(一部の私立校を除いて)基本的にオーストラリア人が教員になるのと「同じ資格」が求めらます。
「同じ資格」とは、
2)教職課程(1~2年)を経て、免状Diploma of Education(Dip.Ed)を取得後
3)各州ごとの採用試験に合格
といったものです。→この[ 実際のモデルケース ]
1)2)の課程で、(日本語教師としてではなく)外国語教師としてDip.Edを取得することになりますので、日本語から離れた、一般教養や教育実習などを主に学習しなければなりません。
また、オーストラリア国内でも州によって、教師になるための規定があります。例えば小中高校等で日本語教師として教えたい場合、州によっては大学の教育学部の中で、
- LOTE(Language Other Than English)コースの「Japanese Language」も専攻、
- または州政府教育省が実施する『外国語教員能力テスト』に合格
しておかなければなりません。
LOTE履修や外国語教員能力テストに合格していなくても、オーストラリアでの教員免許は取得できますが、その州内で「日本語を教えること」はできない、というルールがある場合があります。
ですので、ご自分が教師として働こうとする各州の規定を事前に確認して、大学の履修コースを選ぶことがポイントです。
ご参考までに、1)2)の課程で、日本語教師養成コースをもつのは下記の教育機関です。
では、上記課程を履修し、資格を取ったら「安泰」なのでしょうか。
・・・現実はなかなか厳しいものがあります。
(日本語教師を含む)外国語教師の正規定員自体が頭打ち(飽和状態)の状態です。また、オーストラリア人の教員(特にセカンダリーなど)は、通常一人で2科目以上を教えることが奨励されており、日本語教師として、日本語だけを教える常勤教師になるのはかなり難しいものがあります。
さらに、日本語の需要のピークは過ぎ、最近では中国語やスペイン語の履修のほうが推奨され、厳しい学校の予算下、日本語教育を廃止する学校も増えてきており、職を失う日本語教師も出てきています。
小中高校でなるモデルケース
※本頁記載の大学のコースや進路等は、あくまで過去の実例であり、現地情勢や各大学都合により予告無く変更されている場合がありますので、年次、各大学の案内等を確認するようにしてください。
(B)大学などの高等教育機関でなるには?
特に規定はありませんが、教授(Lecturer等)として日本語教師の職を得るには、一般的には上記(A)の1)2)の課程に加えて、「修士号」および「博士号」が必要な場合が多いようです。また、論文を作成できるに値する数年以上の十分な日本語教育経験や、これまで担当した概要(コースのアウトライン、シラバス、教案、副教材、学生からの授業評価など)や、執筆論文や記事、出版物、実務関係の業績に関する資料などが求められることが一般的です。
また、これはオーストラリアに限らず、海外の大学勤務に共通の注意点ですが、大学勤務の場合、「日本語を教えるために採用される」というよりかは、日本文学や日本の芸術などの専門分野を教えるために講師として採用されることが多く、日本についての唯一無比の専門性を持っていることが求められ、その専門性と大学のニーズが合致した際に初めて雇用が生まれます。そうした専門科目を教える傍ら、「週に1,2度程度、(オマケで補足的に)日本語も教える」というのが大学での日本語教師の一般的な勤務例であり、単に日本語を教えることが主目的での採用はほとんどないのが大学勤務の実状です。
(C)民間の語学学校・日本語学校などでなるには?
特に規定はありませんが、「日本語を教えられる能力があることの証明」があれば有利です。例えば、以下A~Cのようないずれかの資格に加えて、「経験」と「語学力」そして就労することができる「適正なビザを保有していること」を求めている場合が多いようです。
B.日本語教育能力検定試験合格者
C.日本またはオーストラリアの大学にて日本語教育専攻または副専攻
オーストラリアは日本の「法務省告示の日本語教育機関」に適用されるような資格規定の縛りはありませんので、こちらの日本語教師養成講座 420時間 通信教育 を受講して、豪在住者やワーキングホリデービザをお持ちの方などが、以下のような民間の語学学校などで日本語教師として働く人もいらっしゃいます。
- Brisbane Japanese Language and Culture School
- NSW日本語補習校(ルイシャム校)
- ナナワディン日本語学校(Japanese Tutor Melbourne Language School)
- Japaneasy(ジャパニージー)メルボルン
前述のように、オーストラリアでの日本語の需要量から、民間(私設)の日本語を教える語学学校自体、たくさんあるわけではなく、学校があったとしても生徒数も潤沢とは言えないのが実状です。
そうした背景ですので、民間の学校機関で日本語教師の求人が極々稀にあったとしても、ほとんどがアルバイト/パートタイムであり、テンポラリーの職では就労ビザも取得できないため、現地で永住ビザやワーキングホリデービザなどすでに就労に適正なビザを持っている人に採用が限られている場合がほとんどです。
日本から「オーストラリアの民間の学校でのフルタイムでの正規雇用を目指すこと」はほぼ無理であり、加えて日本語人気(需要)は低下の一途であることからも、今後さらにオーストラリアでの日本語教育事情は困難になっていくことが予想されます。
ご参考までにオーストラリアの民間機関での日本語教師の過去の募集例を以下にご紹介しますが、前述の通り、オーストラリアでの民間機関(日本語学校等)での日本語教師の募集はほとんどがアルバイト/パートタイムです。アルバイトで働くことを目的としてのビザ取得は前述の通りかなり困難なため、雇用者側によるビザサポートはありません(できません)。よって、必然的に求人対象は適正なビザ(オーストラリアの永住ビザ、ワークビザ、ワーキングホリデービザ等)をすでに持っている方に限定されることがほとんどです。
その他 関連Q&A
オーストラリアならではの日本語教育の特徴は?
Q. オーストラリアならではの日本語教育の特徴って何ですか?
↓
A. オーストラリアの日本語教育の特徴ですが、オーストラリアは州ごとに「カリキュラム標準フレームワーク」(日本でいう「学習指導要領」)が存在します。よって、州ごとにその特徴も異なりますが、ビクトリア州を例にとって(日本語を含む)外国語学習の目的を見てみると、
- コミュニケーション
- 社会文化理解
- 言語意識
が掲げられています。やはり重点は、自己表現や相手理解の手段としての外国語教育にあるようです。日本でも英語などの外国語教育で同様のスローガンはよく掲げられてはいるものの、結局は文法重視教育に陥りがちです。
オーストラリアでは、「移民の国」で数多くの、多種多様な移民が暮らすこともあり、文法も大切ですが、それ以上に「過程よりも結果」、コミュニケーション能力や異文化に対する慣用性なども同時に身につけることにゴールに置いているのがオーストラリアの外国語教育の特徴といえます。
日本の教育現場では「使える英語」教育へ転化が何年にも渡って叫ばれていますが、日本語教師ボランティアとしてオーストラリアの教育現場で経験を積めば、「百聞は一見にしかず」で、オーストラリアの外国語教育から学べること、日本でのこれからの教育のヒントなることも多々体感習得されることでしょう。
オーストラリアの日本語教師は英語力が必要か?
Q. オーストラリアでは英語で日本語を教えているのですか?日本やアジアでは直接法(日本語で日本語を教える方法)で教えるから「英語力なんていらない」って言われたんですが、オーストラリアで日本語教師をやっていくには英語力は必要ですか?
↓
A. はい、オーストラリアでは通常、英語で日本語を教える間接法での日本語教授が一般的です。そのため、英語でクラスコントロールができる程度以上の英語力は必要です。
上記のモデルケースの数例を見てもわかるように、オーストラリアで日本語教師になる前に、TESOLなど1年か2年の相応の期間を英語に費やしていることがわかるかと存じます。
ご参考までに日本語教師が活動している、ある私立学校の校長先生のコメントを紹介します。
求人の応募者のほとんどは英語力が不十分
(私立校で日本語教師の欠員が出た際に現地向けの) 新聞広告などで日本語教師の求人を出すと、毎回、オーストラリア在住の日本人から非常に多くの応募が殺到します。しかし残念ながら、ほとんどの応募者の英語力が学校教育の現場で働くには十分ではなく、採用に至ることはありません。
以上からもオーストラリアのそれなりの学校機関で日本語教師としてやっていくには、ネイティブ並みの英語力であることは目指したほうがよいでしょう。
有資格者はオーストラリアの永住権がもらえるのか?
Q. 日本語指導資格があるとオーストラリアの永住権をもらいやすい、と聞いたのですが本当でしょうか?
↓
A. 確かに日本語教師の資格を持っていれば、永住権をもらえやすいという時代はありました。日本経済に勢いがあったバブル期の1980年代頃から2000年初頭ぐらいまでです。オーストラリア人も日本語ができるようになることで、経済大国の日本との貿易において、何かしらメリットが大きかったからです。その頃は、オーストラリアの経済も今より小さく、また豪州の人口も少なかったため、移民受け入れに積極的でした。
しかし、現在では、オーストラリアの人口もそこそこ多くなり、移民で人口を増やすというよりかは、内需をどのように裁くか、ということにオーストラリア政府の重点も移ってきています。
さらに、現在の世界経済の動向から、オーストラリアでも注目されている外国語のトレンドは、日本語ではなく中国語(マンダリン)のほうです。一応、2012年のオーストラリアの白書では、教育で施す外国語として日本語は残ってはいるものの、白書を読めばわかるように、重点がおかれているのは、やはり中国語のほうです。
実際、これまで日本語を教えていたオーストラリアの学校でも、予算が厳しい学校から順に日本語を廃止し、職を失った日本語教師も増えてきています。現在では、日本語指導資格があるからといって、オーストラリアの永住権がもらえるか、というとかなり厳しいのが現実です。
そもそも永住権というのは、その国で不足している技能を持つ人材に対して優遇して与えられる傾向があり、オーストラリアで今不足しているのは、「日本語を教える人」ではなく、例えばコックなどの「内需を賄う職種」のほうが有利となっている傾向があります。
今後もオーストラリアにおいての日本語教育は、突然なくなりはしないものの、徐々に衰退していくことが予想され、日本語指導資格があるから、ということで永住権をもらえやすいか、についてはますます厳しい状況になっていくことが予想されます。
英語で教える間接法を学べる方法はないか?
Q. オーストラリアへワーキングホリデーで行く予定です。現地で日本語を教える機会があったらぜひチャレンジしたいと思ってるんですが、その準備として日本語教師養成講座などを今のうちに受講しておこうと思います。オーストラリアや欧米圏では、日本語は英語を使って教えることが多いと聞きました。日本では直接法の講座ばかりなんですが、英語で教える間接法を学べるような講座はありませんか?
↓
A. こちらの日本語教師養成講座 420時間 通信教育 は英語で教える間接法が学べる講座としての定評があります。1986年来の実績がある、オーストラリアでも一番古い日本語教師養成講座で、文化庁の「日本語教員養成において必要とされる教育内容」に基づいて学習します(日本でも受講可能です)。
これからオーストラリアの日本語教師ボランティアに参加される方なども、渡航前から事前にこの養成講座で勉強しておくと、現地での活動もスムーズに進む一助となることでしょう。
この講座はすべて通信でも受講できますが、オーストラリアご在住者は、シドニーで2週間通学 日本語教師養成講座にて講座の前半を修了することも可能です。
この通信講座修了後、例えば、
- NSW州シドニーの日本語補習校
- メルボルン・イースタンサバーブの語学学校
- メルボルン・セントラルの日本語学校
などで働いている方もいらっしゃいます。
また、オンライン日本語教師をされている講座修了生もたくさんいらっしゃいます。
→この日本語教師養成講座の|お問合せ・資料請求|仮申込(見積依頼)|
これまで当講座には以下のような受講動機がみなさんから寄せられています。
日本語を教える楽しさを知った
現在、日本語の家庭教師をしており、日本語を教えることの楽しさを知りました。もう少し専門的にできるといいな思い、調べたところここの日本語養成講座を見つけました。(NSW州Marrickvilleご在住の35歳女性)
オーストラリアでの小学校教員の第一歩として
将来、オーストラリアで小学校の教員免許を取得しようと考えています。その始めとして日本語教師講座を受講しようと考えました。(NSWシドニー南武ご在住の36歳男性)
日本人である自分が活かせる仕事に就きたい
海外での生活で、日本人である自分が活かせる仕事に就きたく興味を持ち始めました。また、今はオーストラリアで働いてますが、日本の文化や言葉について質問された時に日本語の魅力について上手く説明できなかった自分に驚き、改めて日本の魅力について考えるようになりました。それらを少しでも沢山の人に正しく伝えられるようになりたいと思ってます。(QLD州Toowoombaご在住の43歳女性)
ハーフの子どもたちに正しい日本語を教えたい
自身が国際結婚をしており、子どもたち(小学生低学年の子どもを2人)に正しい日本語を教えてあげたいことと、現在 子どもが通う学校の日本語クラスのアシスタントをしており、(先生はオーストラリア人) 自分が資格を取ることで、少しでも生の日本語を聞かせ、生徒たちの助けになればと思いました。(NSW州Caringbahご在住の45歳女性)
メルボルンの日本語学校で働くため
オーストラリアのメルボルンで学生をしています。こちらにある日本語学校で働きたいと思っています。よろしくお願いいたします。(メルボルンご在住の49歳女性)
教える必要に迫られて
知人のオーストラリア人が日本語検定試験をうける為の勉強のお手伝いをしていますが、正しく答えることができない場合が多々あります。教える知識を得るため、この通信教育を始めてみたいです。(NT州ダーウィンにお住まいの50歳女性)
正教員へステップアップするために
現在、シドニーの日本語補習校にて幼児科のアシスタント教員として勤務していますが、来年正教員へステップアップするために、こちらの講座を受講したいと思います。 (NSW州ご在住の61歳女性)