「英語力を活かしたい」「海外経験を活かしたい」「国際的な仕事をしたい」・・・そんな想いで日本語教師になる人も多いようですが、いざ日本国内の日本語学校に就職し働いてみると、自分が思い描いていた職業とはまったく違い、すぐに辞めてしまう人も多いようです。
一般のイメージとは異なる日本語教師という仕事
その理由は、「法務省告示の日本語教育機関」(いわゆる世間で「日本語学校」と呼ばれるところ)の日本語教師は、英語はほとんど使わないし、「国際的」でなくはないけれど、アジアの学生ばかりに偏重していて、国内に引きこもって毎年同じことの繰り返し・・・といったことが多いようです。
日本語だけ
実際の日本国内やアジアの一部の日本語学校は、日本語で日本語を教える直接法で教えるので、英語その他の外国語力はほとんど使いません。使わないどころか「校内では日本語以外を禁止」という学校もあります。
日本語教師は基本的に「日本語を教える」という部分に特化しなければならない、という職務的制限もあります。
アジアだけ
また、「国際的」に関しては、日本語の需要は8~9割はアジア(それも主に東南アジア)にしかなく、日本の日本語学校もほとんどがアジアからの学生で構成されています。それも中国、ベトナム、インドネシアなど、特定の国の学生が大多数を占めています。中には中国からの学生がほぼ100%を占めている日本語学校も多いです。
各日本語学校も、経営者によって、また依存している現地の仲介斡旋業者によって、集客に得意・不得意があって、特定の国からの学生に偏重しやすい傾向があります。
ですのでよほどアジア・・・専ら中国と東南アジアの人々のお世話が好きで好きでたまらない、という人以外は、なかなか長くは務まらないお仕事、それが日本語教師です。
日本語教師よりも語学力をいかせるかもしれないお仕事
しかし、同じ日本語学校にも、もしかしたら、日本語教師よりも外国語力が求められている職種というものがあります。
それが「事務職員」です。
事務といえば、デスクワークで書類ばっかりいじっている・・・というイメージがありますが、(学校にもよりますが)日本語学校の事務職員は、どちらかというと「スクールカウンセラー」や「チューター」「営業」といった接客仕事に近いものがあります。
各国からやってきた学生たちの進路相談やカウンセリングをしたり、ビザ申請の手続き関連や、時に学生の母国まで出向いて営業活動などをすること・・・つまり海外を飛び回ることも、事務職員の職務内容に含まれていることもあります。
事務職員が学生を相手にするときは、そこは日本語の教室ではないので、日本語以外厳禁というわけではなく、むしろ、その学生の母語でコミュニケーションができたほうが望ましく、そのため、日本語学校の事務職員の求人情報には、「英語その他語学力」が求められていることが多いです。
事務の求人例
実際、最近、広告されていた日本語教師の求人情報の以下のような内容でした。
【東京都内の日本語学校(法務省告示校)の求人内容】
- 募集職種:事務(契約社員/1年後に正社員契約更新可能)
- 応募資格・採用条件:
大学卒業
英語 日常会話
基本的なPCスキル操作(Word、Excel必須)
※年齢不問、未経験者の応募可- 職務内容:日本語学校の事務業務全般(受付、事務業務、学生生活サポート、入管関係事務 等)。海外出張あり。海外生活の経験や語学力を活かせる仕事です。
ちなみにこの事務の求人は、掲載開始から2週間ほどで採用が決定し、応募受付終了となりました。
【東北にある日本語学校(法務省告示校)の求人例】
- 募集職種:事務職員 (正職員・パート)
- 応募資格・採用条件:
短大卒以上、
基本的なPC操作(Word,Excel)ができる方、前
英語力あれば、尚可。
※年齢不問、未経験者の応募可- 職務内容:留学生の受け入れ事務と生活指導。留学生が海外にいる段階から来日の準備をし、無事入国できた後には日本での生活が順調に始められるようサポート。
【栃木にある日本語学校(法務省告示校)の求人例】
- 募集職種:事務(学生募集担当、正社員、月給25万円~)
- 応募資格・採用条件:
学歴不問
日常会話レベルの英語力
関係各所との調整業務力ある方
※年齢不問、未経験者の応募可- 職務内容:日本語学校各期入学者40名の募集業務。どのような生徒を募集するかの募集計画、宿泊施設手配、学校説明会実施などを各国エージェントと調整。説明会の資料やコンテンツ作成。説明会にてプレゼン実施。生徒入学後は生徒の管理、学費請求管理、学生サポートなど全般。
それ以外の求人でも、事務募集の応募資格に関しては、
- 日常会話レベルで英語又は生徒の母語を話せる方
- 日本語を母語とし、英会話が可能な方
と、英語力や語学力が求められていることが多いことがわかります。
事務の求人は、数は少ないですが、例えばこちらの事務の求人などでご覧いただけます。
※その他、英語力をいかせる求人情報もあります。
一方で、日本国内の日本語学校勤務の日本語教師に関しては、英語力や外国語力が求めらていることはほとんどありません。つまり、英語などをいかせる機会はほとんどない、ということになります。
但し、日本国内の一般的な日本語学校(法務省告示の日本語教育機関)以外で日本語教師をやる場合は、英語力が求められている求人がけっこうあります。→参考:[日本語教師は英語力は必要ですか?]または、下記の「ユニークな日本語教育機関」をご参照ください。
事務職員の求人の特徴
- すぐに採用決定となり募集受け付け終了となる
事務職員は、日本語教師よりもポジション数が少ないため、求人広告が出されたら、応募が殺到し、すぐに埋まってしまうことが多いです。 - マイナーで知られていない
日本語学校の事務は「知る人ぞ知る」という職種で、今のところ、世間の脚光を浴びていない穴場的な立ち位置にあります。 - 求人していることがわかりにくい
事務職員は、日本語学校の日本語教師募集の際に、オマケのような形で併記して募集がなされるので、一見して見過ごしてしまうことが多いです。 - 日本語教師の資格は必要ない
日本語学校に勤務する身であっても、事務職員は日本語教師の有資格者である必要はありません。大卒以上/外国語力/基礎的なPCスキル といった基礎的な応募資格しか課されていないことが多く、比較的ハードルは低いです。
もし、日本国内において「英語力を活かしたい」「海外経験を活かしたい」「海外出張があるような仕事をしたい」と考えているのでしたら、日本語学校の事務職員という職種の求人を当たってみるのもお勧めです。
「日本語学校」だけではない
ちなみに、欧米圏の人たちは、どういうところで日本語を学んでいるかというと、「法務省告示の日本語教育機関」以外のところ、例えば、
といったような形態やスクールで学んでいることが多いです。そのため、上記の勤務先では日本語教師であっても、英語力その他の語学力が求められるものが多いです。
背景としては、欧米圏の人たちは、学生ビザ発給を必要としていない人が多い(ワーキングホリデービザや企業の駐在員として来日している人が多い)ため、ビザ目的で日本語学校に通う必要はなく、テンポラリーで学んでいる人が多いためです。
以上のように、一言で「日本語を教える学校」といっても、法務省告示の日本語教育機関やそれ以外のものもたくさんあります。そして、その学校のタイプによっても構成する生徒の国籍に特徴があり、また日本語学校内でも、日本語教師よりも外国語能力や海外経験が求められている職種もありますので、ご自身のスキルをいかすべく、「日本語教師」や「日本語学校」と一括りにせず、いろいろな選択肢を当たってみるとよいでしょう。