質問
Q.公認日本語教師制度(国家資格)が始まったら、この公認日本語教師の有資格者に該当しない場合、今後、日本語を教えたり、日本語教師を名乗って働くことはできなくなるのでしょうか?
↓
回答
A.いいえ。先に結論を書いておくと、すべての日本語教師が、国家資格である必要はありません。むしろ、国家資格であることを必要とする日本語教師のほうが少ないです。
まず、念のため、ですが、当初「公認日本語教師」という名称で審議されていた国家資格制度は、2022年5月に「登録日本語教員」に名称と制度内容が変更となっていますので、「公認日本語教師」のことは忘れていただいたほうがよいです。
以下、「登録日本語教員」としてご説明します。
先にまとめておくと
「登録日本語教員」制度では、
- 「登録日本語教員」の資格を持っていなくても「私は日本語教師です」と名乗り「日本語教師」として働く(日本語を教える)ことはできる
- 「登録日本語教員」であれば、数ある日本語教師の職場のうち、「認定日本語教育機関」で「登録日本語教員」として働くことができる
ということになります。
例)すべての英語教師が英語教員免許を持っているか?
イメージとしては、例えば日本国内で英語を教えている人のすべてが(中学・高校等の)英語教員免許を持っているのか?といえば、そうではない・・・むしろ世間一般では英会話学校など英語教員免許を持っていない英語講師のほうが多い、という実情に近いです。
「登録日本語教員」(国家資格)とは
まず、厳密にいうと、「登録日本語教員」と「日本語教師」は違います。
こちら
にまとめてあるのでご参照ください。
広義の「日本語教師」の中に、今回、新たに「登録日本語教員」というものが作られました。
「登録日本語教員」のシェア
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「登録日本語教員」が必要とされる現場は、「日本語教師」(日本語教育)全体の、推定20%超程度であり、「認定日本語教育機関」・・・最たる例は、認定日本語教育機関として文科省に認可された日本語学校などで、日本語を教える教員として登録するのに求められる資格となります。
もちろん、それ以外でも採用の際の参考とされることも考えられますが、「登録日本語教員」が全世界の日本語教師の絶対基準というわけではありませんし、「登録日本語教員」になったからといって、世界のどこでも日本語教師として働けるようになるわけでもありません。
国内・海外の区分けではない
よく「日本国内と海外」と短絡的に仕切りをつけて誤解をしている人がいますが、日本国内の日本語教育機関すべてが「認定日本語教育機関」というわけではなく、逆に海外のすべてが「認定日本語教育機関」ではない、ということでもありません。
ゼロか100か?白か黒か?国内か海外か?の区別で理解しようとすると、登録日本語教員(国家資格)のことは永久に理解できないでしょう。
ただ確実に言えるのは、すべてにおいて「登録日本語教員」である必要はなく、むしろ日本語教育全体のシェアの中では、「登録日本語教員」が占める割合は小さい、ということです。
「登録日本語教員」であることが求められる職場は?
前述のように、主に日本国内において、外国人の在留資格付与が直接関係し、認定日本語教育機関として認定を受けた機関で「登録日本語教員」であることが必要となります。例えば、
- 認定日本語教育機関と認定を受けた日本語学校
などです。
国内のその他の形態で働く場合
「認定日本語教育機関」以外、例えば語学スクールや日本語教室、オンラインスクール、個人で教える場合などは、これまで同様、自由・・・必ずしも「登録日本語教員」の資格は必須ではない(採用先等の判断次第)、ということになります。
もちろん「登録日本語教員」は、日本語を教えられるスキルの1つの証明にはなりますので、資格を取得しても無駄にはなりません。
海外への影響は?
国内・海外に限らず、「登録日本語教員」制度が始まっても、これまでとはそれほど大きな変化はないように感じられます。
インバウンド性が強い
「国家資格」というものがそもそも日本国限定であり、「登録日本語教員」制度の主旨・成り立ちからも、専らインバウンドを念頭に(日本国内向けの制度として)作られているからです。
以下の通り、文部科学省によると、海外には認定日本語教育機関はない、とのことです。↓
Q21. 海外の機関でも認定されますか。
A 海外の機関は認定の対象ではありません。
(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20240402-ope_dev02-000034833_1.pdf
そして「登録日本語教員」になったからといって、全世界のどこでも日本語教師として働ける、というわけではありません。「登録日本語教員」の有資格者として、日本の法務省告示校と同じような感じで働ける国は、日本国内での在留資格がからむ技能実習生関連などアジアの極一部の国に限定的かと考えられます。
学歴の落とし穴
また、それらの国においても、日本語教師として就労ビザを取得するには、「四年制大学卒業以上」の学歴が求められることもあります。「登録日本語教員」の資格を取得するには学歴は求められませんが、海外で日本語教師として働くには、ビザ取得条件として学歴が求められることがある(「登録日本語教員」の資格だけでは不十分な場合がある)、ということです。
海外は治外法権
また、基本的に、海外は治外法権です。日本の仕組みをそのまま適用させることのほうが困難です。海外の日本語教育現場は多岐に及んでおり、それぞれの国・地域の意向に沿った教育が行われています。
必ずしも「登録日本語教員」の教え方が、その国・地域のガイドラインにそったものとは限りません。
例えば「登録日本語教員」になるためのカリキュラムでは、間接法をマスターすることはできないなど、必ずしも海外の多様な教育現場で通用するような資格の中身にはなっていません。
よって、特に海外での日本語教師への影響は限られており、また日本国内においても、日本国内のすべての日本語教育従事者が「登録日本語教員」でなければならない、というわけではありません。
まとめ
以上のように、すべての「日本語教師」が「登録日本語教員」でなければならない、というわけではありません。
もちろん、「登録日本語教員」の有資格者であることは、日本語教育従事者としての就職先の幅も広がりますし、アピールポイントにもなるので、機会があれば「登録日本語教員」の資格を取得しておくのも良いでしょう。