新しい日本語

日本国内の少子高齢化による労働者不足を念頭に、外国人に対する日本国のビザ緩和で、今後も外国人が増加していきます。

2018年12月に国会で改正入管法が成立し、人手不足と判断した14業種で、外国人労働者の受け入れを拡大するための法律が2019年4月1日から施行されました。

日本語学校も乱立し、日本語教育推進法なども整備されていっています。

ただ、いずれも「外国人にいかに日本語を押し付けるか」という観点でなされているように感じられます。

日本語教育には限界あり

もちろん、外国人に対する日本語教育を充実させることは重要ではありますが、外国人も人間ですので、必ず限界があります

どんなに優れた日本語教育環境を整備したとしても、学習能力は学習者によって、まちまちですので、その枠組みから必ず漏れてくる外国人は出てきます。

もちろん中にはネイティブの日本人よりも日本語が上手なのでは?と思えるような外国人もいらっしゃいますが、それはごく一握りで、通常は、どんなに日本語レベルが上がっても、やはりどこかたどたどしい部分が残ってしまいます。

また、日本人の日本語教師の不足で、外国人日本語教師による日本語教育も進んでいます。日本人の手を離れ、外国人の、外国人による、外国人のための日本語教育の拡大とともに、今後は、日本人が想定していたのとは違う日本語が広がっていく可能性もあります。

日本人からの歩み寄りが大切

そこで大切になってくるのが、日本語に関して、日本人からの外国人への歩み寄りの姿勢も今後必要になってくるという点です。

具体的には、「外国人にとって分かりやすい日本語」を、日本人が学ばなければいけないことになってきている、ということです。

「外国人にとって分かりやすい日本語」を話せるスキルは、外国人のためだけでなく、我々日本人が将来において、健康で文化的な最低限度の生活を手に入れるためにも必要になってくるものです。

病院も介護施設もスタッフは外国人だらけ

すでに街中の飲食店のスタッフは外国人が多くなっていますので、日本語でちゃんと注文したのに、理解してもらえなかったという経験をされた方も多いでしょう。ふつうに日本語でオーダーするのではなく、外国人らがどのような日本語を理解しやすいか、という事前知識を持ってメニューをオーダーしないといけないケースが出てきています。

飲食店ならまだその程度でいいですが、病院や介護施設だったらどうでしょうか。

深刻な人手不足で、今後、病院や介護施設のスタッフもどんどん外国人が増加します。もちろん、看護師や介護士の職に就くには、それなりの高度な日本語スキルが事前に求められていますが、やはり限界は必ず生じます

また、街中で事件・事故に遭遇したときに、助けを求めた時に、いちばん近くにいたのが外国人だった、というケースも増えてくるでしょう。

このような現場では、しっかりと自分の意志(要望)を伝えられなかったら、自分の命を落とすことにもつながりかねません。

自分の身を守るための「わかりやすい日本語」

その時に、我々サービスを受ける側が、「外国人にとって分かりやすい日本語」を話せるスキルを持って、相手にしっかりと要望を伝えることができることで、外国人が提供するサービスを受けることができ、結果、自分の命をも守ることにつながるかもしれません。

つまり、「外国人にとって分かりやすい日本語」をマスターすることは、(外国人のためだけでなく)我々日本人が「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ためにも、命を守るためにも、必要となってくるということです。

外国人増加で迎える新しい時代の「日本語」とは?

では、具体的に、どんな「日本語」を学べばよいのでしょうか。

以下の「やさしい日本語」の動画がヒントになるかもしれません。

ポイントは、外国から来て日本に住む人がいちばん話すことができるのは(英語ではなく)日本語であるという点。

「やさしい日本語を使おう!~あいさつ編~」【墨田区】

「やさしい日本語」のポイントとして、上の動画では以下の点が挙げられています。

  • ゆっくり話す
  • 短く言う
  • 敬語は使わない。「ですます」を使う。
  • はっきり最後まで言う
  • 優しい気持ちでコミュニケーション

「やさしい日本語」は、誰でも学習することができます。

入門・やさしい日本語 外国人と日本語で話そう入門・やさしい日本語
外国人と日本語で話そう
(Amazon)

目指せ「日本語バイリンガル」

2020年の東京オリンピックにて、ピクトグラムが話題になりましたが、要はピクトグラム的な新しい日本語が求められる時代になってきている、とも言えます。

筆者はアメリカにいた時、街中で何度も「Do you speak Spanish?」(スペイン語話せる?)と尋ねられ、「話せない」と答えると、「なんだ、話せないのか」という感じで、会話が打ち切られた経験がたびたびあります。

外国人が増え、日本人が「分かりにくい日本語の壁」を作ってしまうと、日本国内においても、「ベトナム語話せますか?」「中国語話せますか?」(→なんだ話せないのか・・・)と、どこかの国で起きていることと同じような軋轢が生じかねません。

外国人にとってわかりやすい日本語とは、日本人が習った「国語」ではなく、「外国語としての日本語」の知識が必要です。

それらは上述の「やさしい日本語」講座や、日本語教師養成講座などでも習得することができます。英検やTOEICと同じような感覚で、日本語教育能力検定試験の勉強をして、受験してみるのも、自分の「外国語としての日本語」を教えるスキルをはかる目安にすることもできるでしょう。

新しい「日本語」の知識やスキルの有無で、格差が生じる時代がやってくるかもしれません。

今後は日本国民全員が「日本語」バイリンガルや(準)日本語教師を目指す必要がありそうです。