法務省入国管理局から「法務省告示の日本語教育機関」における新基準「日本語教育機関の告示基準」(2017年8月1日施行)が発表されました。
当ページは、その新基準の中でも特に日本語教師の資格についての変更点をまとめたものです。
※尚、この新基準はあくまで「法務省告示機関」にだけ適用される規定です。
新基準概要
法務省入国管理局が「日本語教育機関の告示基準」を2016年(平成28年)7月22日に策定し、2017年(平成29年)8月1日から施行となります。主な資料は以下の3点。
- 【1】日本語教育機関の告示基準・・・新基準の骨子
http://www.moj.go.jp/content/001199295.pdf - 【2】日本語教育機関の告示基準 解釈指針・・・上記【1】の告示の解釈と補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001200381.pdf - 【3】420時間日本語教員養成研修・・・日本語教育機関の法務省告示第1条第1項第13号ニにおいて日本語教員の要件として適当と認められる日本語教育に関する研修について
※上記2点の基準のうち、420時間養成課程の部分についてピックアップしたもの。
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/
上の【1】~【3】をまとめると、新基準における「法務省告示機関」での日本語教師有資格者とは、
- 四大卒以上+(文化庁届出受理)日本語教師養成420時間講座修了
- 日本語教育能力検定試験合格
- 大学で日本語教育を主/副専攻して卒業
上記3つのいずれかに該当する者のことを指します。
引き続き日本語教師には国家資格はなく、420時間養成課程についても「四大卒(学士)以上であること」や、学習内容は「文化庁のシラバスに基づいて行われること」などの大きな枠組みはこれまでと変わりありませんが、特筆すべき変更点や主なポイントを以下にまとめました。
※この新基準は平成29年4月1日以降に講座の受講を開始する方から適用されます。
特徴1:文化庁の公認制始まる
これまでは文化庁は420時間講座を「公認」することはなく、あくまで学習内容のガイドライン(シラバス)を示すだけでしたが、新基準では「法務省告示機関」で働く場合限定の420時間の資格規定として「(文化庁のシラバスに基づいて)420単位時間以上の研修科目が設定されたものであり,研修の内容について文化庁に届出がなされていること。」との文言が盛り込まれました。
2016年11月に文化庁に確認したところ、
(「法務省告示機関」での)420時間の研修については,届出された内容が解釈指針や文化庁が示した教育内容に沿ったものとなっているか、資料等に基づき確認させていただき、基準等や指針を逸脱している場合には指導等を行う予定です。指導に従っていただけない場合には、届出は受理できないと考えておりまして,仮に基準や指針を逸脱している場合には必要な指導を行うことが求められると考えております。
との回答を得ています。
つまり、文化庁が各講座を審査・指導・受理/不受理するということで、「法務省告示機関」で働く場合の420時間講座において文化庁の公認(認可)制度が始まりました。
420時間講座の届出方法や、文化庁国語課への届出を受理された日本語教員養成研修実施機関・団体
は、上記【3】のホームページ内の、「日本語教員養成研修実施機関・団体」
http://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/pdf/kyoin_kenshu_list.pdf
のリストに記載されています。→参考:[文化庁認定講座の一覧リスト]
※文化庁公表のリストは、当初は1ヶ月に1回程度の更新ペースでその都度、2,3件ずつ追加されていましたが、その後は数ヶ月に1回、1,2件が追加される程度に落ち着きました。以前からある主要な日本語教師養成講座はすべて認められ、ほぼ以前と変わらない状態になりました。
特徴2:通信教育での420時間履修もOK
上記【2】の「解釈指針」の第1条第1項第13号ニ の(2)において、「また,通信による研修(放送その他これに準ずるものの視聴により学修させる研修に限る。以下同じ。)の場合には,420単位時間以上の研修科目のうち,120単位時間以上は面接による研修又はメディア(同時双方向性が確立している場合に限る。)を利用して行う研修(以下「面接による研修等」という。)であること。」との規定が盛り込まれました。
「メディア(同時双方向性が確立している場合)」とは、例えばSkypeのような手段を使ってのオンラインでの授業のことで、この条件を満たせば認定されることが明記されました。文化庁に確認したところ、
今回の新基準においては,通信及びeラーニングによる日本語教員養成講座が教員要件として緩和されました
とのことで、実際、すでに認可された通信講座も存在します。→参考:上述の[文化庁認定講座の一覧リスト] または日本語教師養成講座を比較-評判や費用,認定一覧
つまり、「通信教育だから不可」という基準は存在せず、逆に「通学」であっても、文化庁に認定されていなければ、その通学講座の修了証は「法務省告示機関」での教員資格としては認められない、ということになります。
特徴3: 通学であっても認定外の講座もある
これにより、例え大手の高額な「通学」の420時間講座であっても、文化庁の認定がなされていなければ、「法務省告示機関」で日本語教員として働く場合の資格としては認められない、ということになります。
また、同じ学校内であっても、コースによっては認定されているものと認定外のものに別れる場合もあります。
例えば、
A学院のBコースが認定されたとしても、同A学院のCコースは認定外であることもあります。
また、Xアカデミーの東京校は認定されていても、同Xアカデミーの〇〇県の校舎で催している同名同内容の講座は認定されていない、ということもありますので、受講申込み前に入念に学校に確認するとよいでしょう。
特徴4: 海外の講座は審査対象外
これら審査や認可はあくまで上述の日本国内の一部の日本語学校のみが対象となるもので、海外の日本語教師養成420時間講座については、文化庁に確認したところ、
提供機関が海外にある場合、そういった指導や実際に届出のとおりに実施されているか否かの確認を行うことが困難であることから、現段階においては想定しておりません。あくまで国内の教育機関に関しての周知でございます。
とのこと。
つまり、海外の講座は通学であっても、すべて文化庁の認定外。例え海外で数ヶ月かけて「420時間」と称する養成講座に通学しても、「法務省告示機関」で就職する際には、その修了証は応募資格として認められないということになります。
特徴5: 四大卒以上でなければ講座を修了しても資格にはならない
これは今までのガイドラインと変更された点ではありませんが、念のため書いておくと、
四大卒(以上)+420時間講座修了が1セットで1つの資格
となります。つまり、四大卒に満たない人(中卒・高卒・専門学校卒・短大卒・大学中退者など)が、いくら認定された420時間講座を修了したとしても、それは「法務省告示機関」での採用基準には満たない、ということになります。
※但し、日本語教育能力検定試験合格者には学歴が求められておりませんので、あくまで書面上とはなりますが、検定に合格さえしていれば、「四大卒以上」に満たなくても法務省告示機関での資格要件を満たすことになります。
特徴6: 1単位時間の設定
まず、「420時間」の「時間」とは、「1単位時間」のことを指します。(1時間=60分、420時間=60×420で25200分という意味ではありません。)
そして、今回の新基準では「420単位時間」の「1単位時間は45分を下回っていないこと。」と規定されました。45分を下回っていなければ、1単位は50分でも90分でもよく、また420単位時間以上であれば、例えば「450時間講座」や「480時間講座」でも、もちろんよいわけです。
特徴7:新基準の適用は法務省告示機関についてのみ
そもそも本件は「外国人の違法就労」等を防ぐ目的で、法務省が管轄しているものです。
そのため新基準はあくまで「法務省告示機関」にだけ適用される規定です。例えば、420時間講座についても、文化庁は以下のようにアナウンスしています。
【文化庁】日本語教員養成研修の届出について よくある質問
1.日本語教員養成研修(420単位時間)の開設について
Q1)日本語教員養成研修を新たに開設する場合は全て届出をしなければなりませんか。
A1)そんなことはありません。法務省告示の日本語教育機関の教員になる方を養成するための研修プログラムを実施される場合についてのみ,届出が必要となります。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/pdf/shitsumon_senshu.pdf
「法務省告示機関」とは、例えば、日本国内において『在留資格「留学」が付与される留学生を受け入れることが可能な日本語教育機関』(日本国内において、外国人留学生を受け入れるために法務省管轄でビザを発給してもらう必要がある、いわゆる「法務省告示校」など)のことです。
それ以外の法務省からビザ発給を必要としない機関、例えば日本国内の語学学校、スクール、企業内、出向派遣型、オンライン講師や、海外で日本語教師をやる場合(技能実習生送り出し機関等を除く)には必ずしも適用される規定ではありません。→参考:法務省告示校以外の日本語教師の求人情報
また、文化庁はこれら新基準について、「現段階においては」と前置きしておりますので、今後、基準の変更の可能性もございますので、最新情報は関係省庁のウェブサイトを随時、ご確認ください。
以上が特筆すべき変更点や主なポイントです。
その他関連Q&A
web講座・通信教育だから認められない?は間違い
Q1. 今秋の会社都合による退職で、時間ができたので、集中的に学ぶことのできる日本語教師420時間のページを調べております。英語が得意なので、日ごろからスカイプも含め外国人技術者に日本語を教えています。文化庁が、来年から420時間修了者に対し、web講座卒業生には、資格を認めない方針を出すとか聞きましたが、私の現日程で開始した場合、いつまでの終了時期であれば、この変更にかからないのか、あるいはかかってしまい、認められないこともあるのかを教えてください。
↓
A. いいえ。文化庁は「通信講座卒業生には、資格を認めない方針」ではありません。上述の2017年(平成29年)8月1日から施行の法務省の「新基準」の通り、規定の条件下で通信教育も認められています。新基準をよくお読みいただけますと幸いです。
尚、この新基準は「法務省告示機関」(日本の法務省告示校など)についてのみの規定であり、それ以外の日本語学校や語学学校、その他の形態や海外で日本語教師として働く場合も、通信講座は420時間修了と認められないという規定は元々ありません。
Q2.一つ質問があるのですが、あるホームページで『「双方向での対話が可能なウェブ講座やスクーリングが含まれていても、通学が主ではない講座の場合は、420時間以上の研修をしたとは認められない」との見解が法務省から示されました(2015年8月現在)』との表記があったのですが、通信講座だと「420時間の日本語教師養成講座修了」とはならないのでしょうか?
↓
A. その引用されているwebの記載は「2015年8月現在」と記載がある通り、古いものです。(法務省告示機関における)日本語教師の資格に関しては、2017年8月の法務省からの新基準にて改定(緩和)され、上述の通り、現在では「通信だから不可」ということはなくなりましたので、最新情報にアップデートしていただけますと幸いです。
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