Q. 中国や韓国との領土問題もあり、日本語教師という職に不安を抱いています。今、TPPが話題になっていますが、TPPに日本が参加したら、日本語教師にも何か影響はあるでしょうか?


A. はい、TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement /Trans-Pacific Partnership;環太平洋戦略的経済連携協定)に日本が参加すれば、直接的には日本語教師がどうこうなる、ということはありませんが、間接的には、日本語教師にとってもプラスの影響があるものと思われます。

■ 日本語教師は国際間の物やサービス、人と人をつなぎ円滑化する役目

TPPというのは、簡単に言えば、この協定を結んだ国同士間の関税を撤廃させて、物やサービスの輸出入をより活発にさせよう、というものです。日本語教師自体が、TPPの直接の対象品目となるわけではありませんが、物やサービスの行き来が盛んになれば、当然、人の出入りも盛んになりますので、そこに(外国人にとって)「日本語を学ばなければならない」という必要性が必ず生じます。よって間接的に、劇的に、とはいかないまでも、日本語教師の需要もじわじわと増加することが見込まれます。
日本で物やサービスをより多く買ってもらうようにするためには、日本のこと、日本人のことをより理解する必要があり、その過程で日本語学習の需要というのも、必ず発生してくるからです。

日本経済と日本語教師の関係図以前、日本語教師の給料が低い理由でも「日本語教師は日本経済のコバンザメ」と言及したように、日本経済が活性化すれば、それに比例して日本語の需要が高まり、日本語教師の需要も拡大します。

但し、英語と違って、日本語は世界の中でもあくまで日本と日本人に関することに限られてしまう特性がありますので、英語のようには爆発的な需要というのは今後も望めませんし、日本経済も成熟期に入っていますので、TPPに参加しても、これからの中国やアフリカのように爆発的には成長はしていきませんので、日本経済の規模=日本語教師の需要は、今後も現状維持か、領土問題等で失われた需要減少分を、TPPにより地味ながら緩やかに取り返していく、といったことが今後予想されます。

■ 日本語教師の需要の変換期

これまでの日本語教育、翻って日本語教師の需要というのは、こちらの日本語の需要と学習者のランキング表の通り、中国と韓国に偏り過ぎており、リスク分散ができていませんでした。そのため、領土問題などで一気に反日感情などが高まった時、一気に職を失う日本語教師が増加したり、といったことが起きてしまいます。

しかしながら、TPP参加国というのは、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、マレーシア、ベトナム、ペルー、シンガポール、ブルネイ、チリなどの11ヶ国であり、中国や韓国以外とのつながりがより活発化することになります。

TPP参加11ヶ国地図

欧米圏であるアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダでは、お互い経済的に成熟期ということもあり、今後も日本語教師の需要はそれほど劇的には変化しないかもしれませんが、それ以外の国では、これまで以上に、日本語教育が盛んになる気配が出てきてます。

実際、ここ最近もこちらの日本語教師養成講座に、各国現地在住の日本人の受講生誕生のみならず、マレーシアご在住のマレーシア人の方や、シンガポールご在住のシンガポール人の方からのお申込みが入ってきており、現地国籍の方々が現地で日本語教師になって、日本へ向かうマレーシア人やシンガポールの人々に日本語を教えようという需要が高まってきていることが、講座の手配の中で如実に感じられるここ最近です。

上記の日本語教師養成講座の受講生は、こちらの受講生分布をご覧いただいてもわかるように、世界45ヶ国以上に及び、現在も日々増加し裾野が広がっていっていっています。この受講生増加の傾向は、特にアジアを中心に今後の日本語教師の需要が高まっていくことの1つのバロメーターと言えます。
これからのTPP参加で、ますます東南アジアや南米での日本語の需要=日本語教師の需要は高まっていくことが、この世界各国での受講生増加の動きからも推測できます。

現在、日本語教師の就職がなかなか決まらない困難に直面している方や、マンネリを感じている教員は、一般的な日本語教師の勤務先である中国、韓国、日本国内から視点をずらし、TPPで今後の日本語の需要の伸び白が期待できる、メキシコ、マレーシア、ベトナム、ペルー、シンガポール、ブルネイ、チリなどで勤務する、という道も模索してみるとよいでしょう。

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