やる気と日本語教師

先日、以下のようなご質問を受けましたので、簡単にまとめてみました。

やる気さえあれば日本語教師になれますか?

Q. 私は日本語教師の資格は持っていません。これから勉強して検定合格や養成講座の受講をしていくつもりではあります。やる気だけは他人に負けないつもりなのですが、やはり資格が先で、資格がないと日本語教師にはなれないものでしょうか?

A. いいえ、「やる気さえあれば日本語教師になれる」というのは、まんざら嘘ではありません

日本語教師の定義を狭義でとらえるか、広義でとらえるか、にもよりますが、

  • 狭義:「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)」のみで働く
  • 広義:「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)」以外で働く

の大きく2つに分類することができます。

日本語学校のシェア

狭義

狭義でとらえる場合、「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)」で働くには、法務省が告示しているルールに従う必要があります。つまり、登録日本語教員(国家資格)になる必要があります。
→参考:登録日本語教員(日本語教師の国家資格?)になるには

実は、「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)」の日本語教育の現場全体におけるシェアは20%超程度です。

広義

広義でとらえた場合・・・「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)」以外の日本語教育の現場全体におけるシェアは80%程です。

法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)以外で働く場合は、資格の縛りはありませんので、日本国内においても無資格でもなれるところも存在します。

日本語教師だと自称すれば、今、この瞬間から、誰でも日本語教師になれますし、実際、「日本人だから」という理由だけで日本語教師をしている(日本語教師をやらされている)日本人もいます。

「法務省告示の日本語教育機関(認定日本語教育機関)以外」とは、例えば、

  • 語学学校・語学スクール
  • 日本語教室
  • 企業派遣
  • フリーランスの日本語教師
  • 社内で教えるインハウス日本語教師
  • オンライン日本語教師
  • 個人でチューターのような形で教える

といったような形態が挙げられます。

特に個人で開く日本語教室や個人チューター、オンライン日本語教師などは、学習者さえいれば今すぐにでもできます。個人・法人問わず、外国人生徒を募って日本語教室や語学スクール、日本語塾、オンラインスクールを作って教えたり・・・も無資格で可能です。まったく違法ではありません。

日本で英語を教えている人全員が「英語の教員免許を持っているのか?」というと、「そうではない」のと同じことです。

次に、「法務省告示の日本語教育機関」以外の学校のような組織・団体で雇ってもらう場合ですが、通常、日本語教師になるには日本語教師有資格者(420時間修了、検定合格、大学で主/副専攻等)であることが求められることは多いですが、それらはあくまで参考資格なので、それに見合う経験や資質をお持ちであれば、その組織・団体の判断次第で無資格でも採用されることはあります。例えば、そこで求められている資格は必ずしも、文化庁届け出受理の日本語教師養成講座でなくてもOKなのです(採用先の判断次第です)。

また、海外、特にアジアにおいては、採用条件は混沌としている所もあり、無資格でもなれる勤務先は少なからずあります。

やる気さえあれば採用可能性がある求人例

『資格なし』でも日本語教師になれる求人は、以下のリンク先にまとめてあります。

上記「資格不問の日本語教師・教職の求人」をご覧の通りですが、これまでも以下のような日本語教師の求人が存在します。実際にあった求人票からの抜粋です。

日本語教師の資格不問、学歴不問、経験年齢不問
【勤務地】:在宅オンライン(日本国内・海外在住者も可)
【応募資格】:

  • 日本語母語者
  • 日常会話(中級)程度の英語が可能な方(英語のレベルに関しては面接を行う際に要問合せ)
  • 言語教育に対するやる気と熱意があれば年齢、経験は問いません。

【給与】:1コマ60分あたり8USD(銀行送金にて支払)
※パートタイム、フルタイムどちらも可能。

ミャンマーでは、最近も以下のような日本語教師の求人の採用条件が存在します。

【募集職種】:日本語教師(常勤)
【勤務地】:ミャンマー・ヤンゴン
【 採用条件(学歴・資格等) 】:

  • 学歴、経験を問いません。
  • とにかくやる気があり、ミャンマーという国でミャンマー人に教えてみたいという方。
  • 日本語教師として経験を積みたいという方。(教え方は指導いたします)

【 勤務条件(曜日・時間等) 】:週6日2コマ(1コマ2時間),月曜休み,年2回、10日間程のお休みあり。
【 待遇(給与など) 】:応相談,寮完備,生活費支給,更新におけるビザ代支給

中国では、比較的規模が大きな日本語教育機関であっても、

【応募資格】:日本語母語者で四大学卒以上で50代までの方(就労ビザ取得の関係上)

※資格お持ちの方は更に優遇致します。

といった感じで、中国、台湾あたりでも、四大卒以上であれば必要最低限の応募条件(つまり日本語教師としての就労ビザが取れる)を満たすため、最悪、日本語教師としての資格は二の次であることも多々あります。

中国と並んで求人数が多いベトナムであっても、常勤(専任)の募集例にて、

【 応募資格 】:(中略)
上記の条件(有資格)に満たない方でも応募いただくことは可能です。
【 待遇(給与など) 】:給与1,400ドル~

というものがあり、タイの語学学校の例(日本人、常勤1名募集)では、

【採用条件・応募資格】:
420時間養成コース、検定試験合格、主専攻副専攻、他の教員免許をお持ちの方は相談に応じます。
【待遇等】:月50000バーツ以上。労働許可証およびノンBビザを支給します。

また、韓国・釜山にある日本語学校の求人では、

【 応募資格 】:
日本語が母語で4年制大学を卒業している方、日本語教師の資格(大学で日本語教育専攻/420時間講座修了/日本語教育能力検定合格者)のいずれかに該当する方。
※未経験者可
※上記の条件に該当する方は韓国語能力不問ですが、条件に該当しない場合でも韓国語能力とやる気がある方は応募してみてください。

・・・など列挙し始めたらきりがありませんが、それら求人を注意して見るとわかるように、応募条件に資格を羅列していても、それで門前払いというわけではなく、「~をお持ちの方は優遇します/相談に応じます」などの文言が付されていることがあります。

まとめ

つまり、そうした資格を持っている人を「優遇」はするけれど、必ずしも「有資格者でなければならない」というわけではなく、無資格でもやる気さえあれば採用してもらえる可能性がある勤務先は実際に存在することがわかります。

なぜなら、日本人の少子高齢化もあって、慢性的に人手不足であり、海外、特にアジアに赴任したがる日本人が近年、激減しているため、採用条件を厳しくしてしまうと、誰も応募しなくなる、という背景があるためです。

以上のように、採用条件等は雇用先(採用先)により様々なのが日本語教師の実態です。よって、「やる気さえあれば日本語教師になれる」は本当なのです。

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