日本語教師の資格の1つ、日本語教育能力検定試験について、よく受けるご質問とその解答をまとめました。
※この試験の合格率は本ページ末尾をご参照ください。
国家資格(登録日本語教員)制度施行後、令和6(2024)年度以降の日本語教育能力検定試験およびその資格としての効果については、こちら『今後、日本語教育能力検定試験はどうなるか 』をご参照ください。
※以下は2024年以前の状況に基づいた、過去の記事となります。
Q. 日本語教育能力検定試験とは国家資格ですか?
A. 日本語教育能力検定試験とは、日本語を学ぶ外国の人々に日本語を教える際の知識や教える能力が日本語教育の専門家(日本語教員・日本語教師・日本語講師など)として、一定の水準に達しているかどうかをはかるもので、合格率は例年20%前後で推移している試験です。(→歴代の検定合格率はこちら)
※ 国家試験ではありません。
(「英検」と同じで「財団法人」により催される、あくまで「1民間資格」です。)
検定は、日本語教師になるための国家資格・国家試験はありませんが、日本語教育機関での採用の際には、この「日本語教育能力検定試験」合格を採用条件(応募資格の1つ)にしている機関は少なくなく、また2017年以降の「告示基準」下においては、検定合格は法務省告示機関における「有資格者」の1つの資格とみなされていました。
→参考:[日本語教師の求人・採用情報]
尚、2024年施行の登録日本語教員(国家資格)制度下では、日本語教育能力検定試験は「資格」としての効果を失いました(一部の有資格者の経過措置を除く)。
但し、登録日本語教員の筆記試験と、日本語教育能力検定試験の出題内容や問題は重複する部分も多いため、日本語教育能力検定試験の勉強をすることは、日本語教育に携わっていく上で、無駄になることはないでしょう。
広い意味での日本語教師を目指すみなさんは、日本語教師養成420時間講座履修などと併せて、この「日本語教育能力検定試験」合格も視野に入れておくとよいでしょう。
Q. 検定は年に何回実施されるか?日程を教えてください
「日本語教育能力検定試験」は通常、毎年1回、10月に開催されており、直近の日程は以下の通りです。
(出願受付は:7/1~7/31)
Q. 受験料はいくら?申し込みはいつ?
実施元の(財)日本国際教育支援協会記載の日本語教育能力検定試験の募集要項を見てみましょう。
オンライン出願方式へ変更
令和5年度(2023年)以降の日本語教育能力検定試験より、受験申込(願書の出願)は、原則としてインターネットによる受付となり、パソコンやスマートフォンで受験申込サイトから申込みができます。
受験料の支払いは、クレジットカード、コンビニエンスストア、Pay-easy によるオンライン決済を予定しています。
【詳細】令和5年度以降の日本語教育能力検定試験における受験申込方法について(予告)
http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/kentei_web.pdf
実施要項
- 受験資格:どなたでも受験できます。
- 受験料:17,000円(消費税含)→関連記事:受験料さらに2500円値上がり17000円に
- 申込方法:オンライン出願
- 願書受付: 2024年7月1日~7月31日
- 受験票:同年9月下旬頃に協会から発送予定(ハガキ)
- 試験日時:同年 10月27日(日)9:00~16:40
- 合否の結果:同年12月20日(予定)に受験者全員に文書にて通知(合格者には合格証書を交付)。
- 試験会場:札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡(予定)
→参考:過去の試験会場名一覧
申込方法
- 原則として受験申込専用サイトからインターネット(パソコンやスマートフォンなど)による出願受付。
やむを得ない理由(身体に障害がある等)、インターネットの利用が困難な場合など)がある場合には、別途受付方法を応相談。 - インターネット出願での受験料の支払いは、クレジットカード、コンビニエンスストア、Pay-easy によるオンライン決済を予定。
- 受験申込の詳細や受験申込サイトの公開時期については、日本語教育能力検定試験のサイト(http://www.jees.or.jp/jltct/index.htm)にて随時お知らせ予定。
- その他過去の参考記事:検定受験案内:申込から合格・不合格まで
Q.420時間講座を修了すれば検定は不要なのでは?
Q. 自分は日本語教師養成講座420時間を修了したので、日本語教育能力検定は受けなくても、日本語教師資格としては十分なのではないでしょうか?
↓
A. いいえ。日本語教師養成講座420時間だけでは十分とは言えません。雇用機関によっては、検定合格も採用条件として必須としているところもあります。
また、法務省の新基準では、420時間修了者には学士(四大卒)もワンセットで併せて求められていますので、四大卒に満たない人(高卒・短大卒・大学中退者等)は、法務省告示校で働くには検定合格するか、大学に通い直すしか方法はありません。
日本語教師養成講座はただ座っていても(授業を理解していなくても)自動的に修了できてしまう学校もあります。また、日本語教師養成講座修了生も年々、何千・何万人と増える一方です。よって、「養成講座420時間修了」+この「日本語教育能力検定試験合格」の両方を取得するなど、日本語教育関連の資格や経験をできる限り補完して万全を尽くしておくべきです。
Q. 試験は何度でも受けられるのか?回数制限はあるのか?
A. 受験回数に制限はありませんので、不合格だった場合も、何度でも受験可能です。年齢制限もありません。実際、3回、4回と受験されている方も毎年一定数いらっしゃいます。
当検定の「全科目受験者 受験回数比 推移」(www.jees.or.jp/jltct/result.htm)を見ると、受験回数が、
- 1回目の人:約70%
- 2回目の人:約20%弱
- 3回目の人:約5-6%
- 4回目の人:約5-6%
という割合でここ数年は推移しています。
- 試験の難易度(司法試験等に比べるとはるかに簡単)
- 受験者の層(例えば受験者の1/3が50歳以上)
といった点も考慮すると、受かる人は、だいたい2回目以内には受かり、2回以内に合格できなかった人は合格は難しい(何度も受験しなければならない)可能性が高い・・・もしくは2回の受験であきらめて、別のルート(420時間講座修了)へ切り替える人が多い、ということが、これらの数字から言えるかもしれません。
Q. 検定のポイントや効率的な学習方法は?独学は可能か?
A. 平成23年度(2011年)の試験から、出題内容がより基本的・基礎的になり、受けやすくなりました。下の出題範囲の中の、赤字の「基礎項目」から優先的に出題されますので、まずはそれら「基礎項目」を重点的に勉強していくのが効率的な検定対策の学習方法の1つと言えます。
ですので、センスの良い方は、書店で参考書と過去問集を買っての独学での合格も難しくはないかもしれません。検定対策を含む「420時間の日本語教師養成講座」もあります。→[この講座の一覧・比較]
出題範囲の主要項目 | 求められる知識・能力 |
---|---|
<社会・文化・地域>
| →左記区分「社会・文化・地域」について 日本や日本の地域社会が関係する国際社会の実情や、国際化に対する日本の国や地方自治体の政策、地域社会の人びとの意識等を考えるために、次のような視点と基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づける能力を有していること。
|
<言語と社会>
| →左記区分「言語と社会」について 言語教育・言語習得および言語使用と社会との関係を考えるために、次のような視点と基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づける能力を有していること。
|
<言語と心理>
| →左記区分「言語と心理」について 言語の学習や教育の場面で起こる現象や問題の理解・解決のために、次のような視点と基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づける能力を有していること。
|
<言語と教育>
| →左記「言語と教育」について 学習活動を支援するために、次のような視点と基礎的な知識を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づける能力を有していること。
|
<言語一般>
| →左記「言語一般」について 教育・学習の対象となる日本語および言語一般について次のような知識・能力を有し、それらと日本語教育の実践とを関連づける能力を有していること。
|
※上記赤字の「基礎項目」が優先的に出題される。但し、全範囲にわたって出題されるとは限らない。 |
Q. 検定試験は一日がかりですか?
Q. 検定試験は一日がかりですか?当日のスケジュールを教えてください。
↓
A. はい、検定は朝から夕方まで催行されます。試験の構成はI~IIIの三段階に別れており、当日のスケジュール例は以下の通りです。
試験の構成と当日の時間割
- 試験会場開場 9:00~
- 試験I/配点100点 9:50~11:40(解答時間10:10~11:40 -90分):
-日本語教育の実践につながる基礎的知識を、出題範囲の区分ごとの設問により測定。 - 昼休み 11:40~12:50
- 試験II/配点40点 12:50~13:45(解答時間13:15~13:45 -30分):
-音声を媒体とした出題形式。試験Iの「基礎的な知識」及び試験IIIの「基礎的な問題解決能力」を測定。 - 試験III/配点100点 14:25~16:40(解答時間14:40~16:40 -120分)
-熟練した日本語教員が有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を、出題範囲の区分横断的な設問により測定。
合否結果
合否結果は、12月下旬(例年12/20頃)に受験者全員に文書で通知。合格者には合格証書を交付。
当検定試験は、日本語教員(日本語教師)となるために学習している者、日本語教員として教育に携わっている者などを対象として、その知識および能力が日本語教育の専門家として必要とされる基礎的水準に達しているかどうかを検定することを目的としていますので、日本語教師を目指す人だけでなく、日本語教育に興味がある人も受けてみるとおもしろいかもしれませんね。
- 参考:(財)日本国際教育協会web(www.jees.or.jp/jltct/index.htm)
- 当ページはあくまでご参考までの概要であり、予告なく内容が変更となっている場合がありますので、より詳細は上記サイトをご確認ください。
Q.【一部改定】試験内容はどのように変わったのですか?
A. 試験形式や内容に大きな変更はありませんが、「(細かく枝分かれする前の)日本語教育の核を提示するもの」と検定を位置づけ直し、基本に立ち返る形で、平成23年度(2011年)の検定から以下の主に2点が一部改定されました。
1.「基礎項目」を中心に出題されることに
重箱の隅をつつくような問題ではなく、基礎的な問題が出題されるようになりました。これにより、平成23年度(2011年)の試験の合格率は若干、高くなりました。
2.記述問題が変わり「考えや主張」が問われることに
「言語にかかわる事象」や「教育実践の方法・内容」などに対する考えや主張が問われるようになりました。考えや主張の「是非」ではなく、その伝え方の論理性と日本語力がポイントとなります。
以下、改定された記述問題の特徴を表す一例です。↓
様々なメディアで「ら抜き言葉」や「れ足す言葉」などの「日本語の乱れ」がしばしば問題になり、議論にもなっている。このいわゆる「日本語の乱れ」について、あなた自身はどう考えるか。また、その考えを授業実践において具体的にどのように反映しようと考えるか、400字以内で述べなさい。
Q. 合格率は?
A. 日本語教育能力検定試験の合格率は、これまで最低が17.70%、最高が30.99%です。概ね、20%程度の合格率で推移していた時代が長いですが、「受験者の層が変わる」と合格率が高くなる傾向があります。
「受験者の層が変わる」とは、日本語教育業界の制度が変わる時・・・例えば、2017年「新基準」施行や、2024年の「登録日本語教員(国家資格)」施行のタイミングで、現役日本語教師が多く受験したり、検定に対して受験者の真剣度が増した時に、30%近くまで合格率が上がる傾向が見られました。
合格率の推移は、こちら【合格率の推移と難易度】日本語教育能力検定試験をご参照ください。
将来は検定も教育実習が必須になる可能性あり
Q. 検定試験は筆記試験のみで、実技はないのですか?
↓
A. はい、現状ではペーパーテストが主で、実技や教育実習はありません。
但し、「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」(平成30年3月)では、「養成・研修の在り方」として、
日本語教育能力検定試験合格者等については教育実習の受講が望ましい(指針の30ページ)
とされており、近い将来、検定試験も、ペーパーテスト合格単品では不可で、教育実習とワンセットになって初めて有資格と認められる・・・というふうに制度が変わる可能性があります。
この平成30年3月の新指針では、大学での専攻や420時間講座においても、教育実習の実施強化に重点が置かれており(指針の38ページ)、検定のみなぜか教育実習がないという矛盾点は、そう長く放置されることはないでしょう。
Q. 海外で検定を受験できるか?
Q1.私は今、海外に住んでいるのですが、この検定試験は受験できますか?
↓
A. あいにく海外に受験地はありませんので海外では受験できません。受験地は日本国内のみです。また、海外在住者は日本国外からの出願はできません。日本在住のご家族や知人に上記願書等を購入、手続きを代行してもらい、日本国内の住所地にて受験票を受け取り、試験当日までには受験者本人が帰国して日本の上記いずれかの都市で受験、という流れで受験可能です。受験票や合格通知等の送付はすべて日本国内のみとなります。
Q2. 検定が年1回、日本でしか受験できないとなると、海外に住む人は、永久に日本語教師の資格は得られないのでしょうか?
↓
A. いいえ、そんなことはありません。そもそも日本語教師の資格と言っても、絶対的にコレといった全世界共通の唯一無比な資格があるわけではありませんので、海外では資格不問で、「日本人だから」という理由だけで日本語教師として雇ってくれる日本語学校などもあります。
また、こちらの日本語教師養成講座 420時間 通信教育は、海外からも受講できますので、これまで世界70ヶ国以上に受講生が誕生おり、海外でも多くのところで有効な資格となっています。
日本国内在住者においても、検定不合格に備えての保険として、こうした420時間養成講座を、検定の勉強と兼ねて受講している人がたくさんいらっしゃいます。