新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年実施予定の日本語教育能力検定試験にも影響を及ぼしています。
場合によっては、2020年の日本語教育能力検定試験は実施されない可能性もあります。
以下、現段階での 検定試験に与える新型コロナウィルスの影響をまとめました。
尚、以下はあくまで現時点での状況ですので、今後も随時、変更が生じる可能性が大いにあります。最新情報は(公財)日本国際教育支援協会のホームページ(www.jees.or.jp/jltct/)にて、その都度ご確認ください。
2020年の検定試験の変更点
(www.jees.or.jp/jltct/)
1.出願期間の変更
当初は令和2年(2020年)6月22日(月)からの出願受付でしたが、令和2年7月20日(月)からに変更になりました。
また、それに伴って、「受験案内(出願書類付き)」の販売も3週間 後ろ倒しとなり、2020年7月15日(水)からになりました。
「受験案内(願書)は(株)凡人社のホームページおよび全国の主要書店で販売されますが、書店により入荷時期は異なります。
2.会場の変更
例年の試験地(開催予定都市)に、福島と兵庫が加わりました。しかしこれは受験生が増えて「受験会場が増えた」ということではないようで、新型コロナウィルスの影響で例年通りの会場が確保できないため、分散させる必要があるためのようです。
JEES(www.jees.or.jp/jltct/)によりますと、「今年度新型コロナウイルスの感染症拡大対応のため、従来通りの会場を確保できない状況」であるため、「希望された試験地にならない場合」があり、例えば、「東北(仙台)」を受験地として希望しても、「福島県内の会場になる場合」があるとのこと。
また、「近畿(大阪)」を希望しても、願書の都道府県コード欄に「28兵庫県」を記入した場合は「兵庫県の会場」になる場合があるとのことです。
3.2020年は検定試験は中止になる可能性もある
これが一番大事なポイントですが、現在のところ「新型コロナウイルス感染症拡大の状況下実施に向けて準備を進めて」いるところですが、「感染防止対策を万全に講じた試験会場の確保が困難な状況」であり、「新型コロナウイルス感染症拡大等により」「今後も国や自治体等からの自粛要請を受けたり、借用予定の試験会場の借用停止等の状況の変化によっては、一部または全ての受験地で実施を中止する場合も」ある、とのことです。
その場合、「受験料は返金」されるそうですが、「但し、自己都合の場合は返金いたしません」との注釈も加えられています。
中止による返金になる場合は、願書に書いたEメールアドレス宛に連絡があるそうです。
海外はもちろんのこと、日本国内においても、新型コロナウィルスは収まったとはまったく言えない状況で、さらに10月は第二波、第三波が押し寄せてきているかもしれません。今年の試験は中止になる可能性も少なくはないと考えるのが妥当かもしれません。
4.海外在住者は受験が困難
海外在住者がこの検定受験のために短期間、日本に帰国する人(トンボ帰りする人)も毎年、何人かいらっしゃるようですが、今年は受験は難しいかもしれません。
と申しますのも、受験の際、提出すべき「自己ヘルスチェック表」に、「もし1つでも該当する項目がある場合は、来場、受験をご遠慮ください。」として、
14日以内に海外渡航歴がある、または14日以内に海外渡航歴がある人と会った。
という項目があるからです。そのため、もし海外在住者が受験をしたい場合は、14日以上前から前もって日本に帰国しておかなければなりません。
また、そもそもそれ以前に、日本への渡航が許されている国に在住しているのか、という問題もあります。
そのため、今年の検定試験に関しては、海外在住者は例年よりも受験が難しくなっています。
2020年の受験は得策か
上述のように、実施されない可能性がある試験に向かって勉強するのは、モチベーションの維持なども難しいところがあります。
朝から夕方まで1日がかりの試験時間、密室の試験会場でエアロゾル感染を気にしながらの受験は、集中力の維持も難しいでしょう。ベスト・パフォーマンス発揮も難しいでしょう。
また、海外ご在住の方で「試験の時だけ受験するために帰国する」という方は、試験が中止になれば、航空券も無駄にしてしまうことになります。
今年絶対に検定に受かっておかなければならない、という方以外は、今年の受験は見合わせておいたほうがよいかもしれません。
1~2年中に制度が大きく変わる可能性も
日本語教育推進法が成立し、この1~2年中に国家資格(登録日本語教員/旧名:公認日本語教師)の制度が創設されるとされている中で、現在、日本語教師の資格自体がどうなるか、細かいところまではわかっていない状況です。
日本語教育能力検定試験もその制度の枠組みの中には取り込まれることはわかっているのですが、それが、
- その制度の最終試験的な位置づけとして実施されるのか? はたまた
- 420時間の養成講座などと並んで、資格要件の1つとして取り扱われるのか?
という部分がいまいち不明瞭な現状です。
さらに、それに合わせて検定の内容自体も変わってくるのか?という疑問もあります。試験の実施要項や内容が変わる(変わらざるをえない)可能性は多いにあると思われます。
制度の全容が明確になり、運営され始め、軌道に乗るまで、少なくとも1,2年は様子を見たほうがよいかもしれません。
日本語教師の不安定さは続く
新型コロナウィルスの影響以外にも、制度的な過渡期ということもあり、当面、日本語教師を取り巻く環境の不安定さは数年レベルで続くことが予想されます。
また、国家資格(登録日本語教員)制度が始まったとしても、結局、需要はアジアの人々にしかありませんので、日本語教師の待遇等はそれほど変わりようがないでしょう。
短期スパンでは以上のような感じではありますが、10年、20年の長期的なスパンで見ても、他国の隆盛に対して日本の衰退(ピークアウト)は明らかであり、日本語教師の需要というのは先細りしていく可能性が高く、そういう意味でも、日本語教師を「本職」としていくことは、慎重に判断されたほうがよろしいかと存じます。
まとめ
日本語教育能力検定試験の受験者の約半分(4割以上)、2人に1人は50歳以上です。つまり、新型コロナウィルスに感染すると重篤化しやすいご年齢の方々です。
そうした方々が、(試験会場はある程度感染対策はされているであろうとはいえ)極一部の無症状の若年層の受験者が持ち込んだウィルスにエアロゾル感染する可能性もあります。ちなみに日本語教育能力検定試験は1日がかりの長時間、密室にいることになります。
また、その先、日本語教師として働き始めることができたとしても、今度は日本語学校の教室という3密空間で、アジア各国から来た不特定多数の若者のお世話をすることになり、勤務先の休業や失業のリスクと併せ、学校開校中もそれはそれでリスクを負っていかなければならない職業です。
新型コロナウィルスは、一度かかってしまうと、例え陰性になったとしても、その後、長期に渡って微熱や倦怠感が続いたりと、「コロナ後遺症」に苦しむ人も少なからずいます。ご年配の方だけでなく、大学生でも後遺症に苦しんでいる人もいます。
日本語教師については新型コロナウィルスの影響以外にも、不安定な要素は続きます。日本語教育能力検定試験の受験だけでなく、進路としての日本語教師(将来性や生活設計)も、十分に吟味されることをお勧めいたします。
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