日本語教育能力検定試験の合格率は、第一回(1987年/昭和62年度)から直近まで、以下のように推移してきました。
これまでの合格率で、最低は17.70%、最高は30.99%で、概ね20%台で推移しており、日本語教育業界の制度に変更がある(=受検者層が変わる)たびに、合格率が上がる傾向が見られます。
【 合格率の目安 】
- 一般人・・・20%~20%台
- 現職者(現役の日本語教師等)・・・30%ぐらい
概ね20%中盤で合格率が推移しており、つまり4人に1人~3人に1人が合格しているということですから、難易度はそれほど高い試験とは言えません。
日本語教育能力検定試験の【合格率】
応募者・全科目受験者・合格者数 推移
(https://www.jees.or.jp/jltct/result.htm より)
- 実施回・・・実施年度・・・合格者数/受験者数=合格率
- 第01回 1987年(昭和62年度) 935/4749=19.69%
- 第02回 1988年(昭和63年度) 827/4580=18.06%
- 第03回 1989年(平成元年度) 999/5394=18.52%
- 第04回 1990年(平成02年度) 908/5129=17.70%
- 第05回 1991年(平成03年度) 1153/6197=18.61%
- 第06回 1992年(平成04年度) 1272/6829=18.63%
- 第07回 1993年(平成05年度) 1224/6769=18.08%
- 第08回 1994年(平成06年度) 1125/6132=18.35%
- 第09回 1995年(平成07年度) 1107/5894=18.78%
- 第10回 1996年(平成08年度) 1088/5960=18.26%
- 第11回 1997年(平成09年度) 1077/5784=18.62%
- 第12回 1998年(平成10年度) 1008/5253=19.19%
- 第13回 1999年(平成11年度) 1091/5690=19.17%
- 第14回 2000年(平成12年度) 1077/5832=18.47%
- 第15回 2001年(平成13年度) 1008/5513=18.28%
- 第16回 2002年(平成14年度) 1171/6128=19.11%
- 第17回 2003年(平成15年度) 1235/6389=19.33%
- 第18回 2004年(平成16年度) 1220/6688=18.24%
- 第19回 2005年(平成17年度) 1155/5934=19.46%
- 第20回 2006年(平成18年度) 1126/5293=21.27%
- 第21回 2007年(平成19年度) 981/4772=20.56%
- 第22回 2008年(平成20年度) 1020/4740=21.52%
- 第23回 2009年(平成21年度) 1215/5183=23.44%
- 第24回 2010年(平成22年度) 1197/5584=21.44%
- 第25回 2011年(平成23年度) 1527/5732=26.64% ※検定内容一部改定
- 第26回 2012年(平成24年度) 1109/4798=23.11%
- 第27回 2013年(平成25年度) 1001/4374=22.89%
- 第28回 2014年(平成26年度) 1027/4362=23.54% ※50歳以上が3割超え高齢化。
- 第29回 2015年(平成27年度) 1086/4727=22.97%
- 第30回 2016年(平成28年度) 1231/4907=25.08%
- 第30回 2017年(平成29年度) 1463/5733=25.52% ※新基準に伴う受験者増加。50歳以上4割近く。
- 第31回 2018年(平成30年度) 1937/6801=28.48% ※過去最高の合格率
- 第32回 2019年(令和01年度) 2659/9380=28.34% ※過去最多の受験者数,前年並みの高合格率
- 第33回 2020年(令和02年度) 2613/9033=28.92% ※ほぼ前年同様の結果
- 第34回 2021年(令和03年度) 2465/8269=29.81% ※受験者数はピークアウト
- 第35回 2022年(令和04年度) 2182/7054=30.93% ※合格率3割超え
- 第36回 2023年(令和05年度) 2542/8211=30.96% ※2024年~登録日本語教員制度へ
- 第37回 2024年(令和06年度) 1045/3371=30.99% ※受験者数激減(過去最低)
【解説】合格率や受検者数の背景
2024年
2024年から登録日本語教員(国家資格)制度が施行。
日本語教育能力検定試験が、一部の経過措置期間中の例外を除いて、登録日本語教員(国家資格)において資格とはみなされなくなった(いわゆる「日本語教師の資格」とはみなされなくなった)ため、「検定バブル」は弾け、2024年は、日本語教育能力検定試験の受験者数は激減。
日本語教育能力検定試験の歴史の中で、過去最低の受験者数となりました。
2023年
2017年の「新基準」開始から5年間の移行期間で、現職日本語教師が「とにかく関連資格はすべて取っておこう」という焦りで受験者が増加。
特に、四大卒に満たない文化庁届出受理の日本語教師養成講座だけを修了した現職の日本語教師が、(検定に合格しておけば学歴は問われないので)日本語教育能力検定試験受験に殺到しました。
それもピークアウトしつつあった(落ち着きを見せる)かに見えましたが、さらには2024年4月から登録日本語教員(国家資格)制度が始まるということになり、詳細が不明のまま、これまた「不安なのでそれまでに今取れる資格は全部取っておこう」(最後の日本語教育能力検定試験になる?)ということで、2023年も受験者は増加。
2017年~2023年は、ある意味、「検定バブル」だった、と言えます。それに便乗してか、検定受験料もどんどん値上がりしました。
2024年以降の検定試験については、こちら『今後、日本語教育能力検定試験はどうなるか 』をご参照ください。
尚、国家資格前に駆け込みで検定に合格したからと言って、検定合格だけでは、登録日本語教員(国家資格)にはなれません(一部の例外を除き、経過措置における資格ともみなされません)。
→詳細:登録日本語教員(日本語教師の国家資格?)になるには
2021年
2017年の「法務省の新基準」公示と2019年の国家資格(「公認日本語教師」・・・現名称「登録日本語教員」)制度の話が出てから、駆け込みで検定受験者が増加しましたが、それもピークアウトしたようです。
また、相変わらず50歳台以上の受験者は多く、2021年も50歳以上は40.41%を占めました。但し、2024年以降に国家資格制度が始まれば、なるのが難しくなった割には待遇が悪い、ということで、日本語教師の成り手は減少することが予想されます。
2020年
試験の内容は2020年も2011年以降とほぼ同様でした。また、受験者数や合格者数は前年とほぼ同様の結果となり、合格率は3割を少し切ったあたりで、3人に1人は合格したことになります。
「国家資格化される」という資格商法のパワーワードに踊らされて、落ち着かない中、受験している人が多いように見受けられます。
2019年
過去最多の受験者数になりましたが、合格率自体は前年とほぼ同じ約28%で、高い合格率でした。2019年は、国家資格化のニュースがちらほらと報道されたので、日本語教師への関心が高まったことが背景としてうかがえます。
検定受験者の高齢化はさらに顕著になり、受験者のほぼ2人に1人が50歳以上で、5人に1人が60歳以上。60歳以上と20歳代の受験者はほぼ同数。「日本語教師は年配の方がやる職業(日本語教師の高齢化)」というイメージが一般化しつつあるように感じます。
2018年
傾向は前年と同様ですが、50歳以上の受講生が4割を超え、検定受験者においても高齢化がさらに顕著になりました。
また、受験者数の増加も顕著で、約15年ぶりに応募者が8000人(実際の全科目受験者は6000人)を超え、合格率は過去最高の28.48%と、30%近くまで上がりました。これは前年からの「新基準」等、日本語教師の資格にまつわる環境が不安定になり、すでに日本語教師をされている方などそれなりに知識と経験がある方々が「とりあえず資格の保険として検定合格も取得しておこう」という受験者が増えたのではないか、と推察できます。
2017年
2017年8月に法務省の「新基準」が公示され、「420時間養成講座」修了者は、学歴「四大卒」以上が必須となりました。
その一方で、「検定さえ合格していれば学歴は問われない」という資格の抜け道が存在しているため、「四大卒に満たない現職者」らが、日本語教員の資格基準を満たす必要性から、日本語教育能力検定試験受験に殺到し、それまで数年の受験者数より1000人ばかり受験者が増加しました。
日本語教師経験者の受験者(それなりに知識がある受験者)が多かったせいか、合格率は25.52%(4人に一人が合格)と比較的高くなりました。
また受験者の高齢化が一段と進み、50歳以上の受験者が4割に迫ろうとしています。少子高齢化に伴い、今後も受験者の高齢化はより一層、進むものと考えられます。
受験者数増加はおそらく一時的なもので、来年2018年は、また5000人弱(4000人台後半)にもどるのではないかと見ています。
日本語教育能力検定試験の【難易度】
以上の合格率やその推移の背景からわかりますが、4人に1人~3人に1人が合格していることから、日本語教育能力検定試験の難易度は、それほど高くない(それほど難しい試験ではない)と言えます。
試験の難易度自体は、特に2011年以降は横ばい(ほぼ同等の難易度)ですが、2017年以降、合格率が上がったのは、「新基準」が始まり、「受験者の質が上がった」ことによるもので、試験の難易度自体はほとんど変わっていません。
- 「受験者の質が上がった」とは、「新基準」等の制度変更によって、現職者(現役の日本語教師)や、(遊びや冷やかしではなく)日本語教員になることを真剣に考え、真剣に試験勉強を積んできた受験者が増えた、ということです。
現職者(現役の日本語教師)や、それなりに試験勉強を積んできた層が受験者になると、合格率が10%近く上がり30%ほどになることからも、「それなりに勉強しておけば合格する確率は高く、それほど難易度は高くない試験」であることは自明です。