国家資格(登録日本語教員)制度施行後、令和6(2024)年度以降の日本語教育能力検定試験およびその資格としての効果については、こちら『今後、日本語教育能力検定試験はどうなるか 』をご参照ください。
以下は、令和5(2023)年度までの状況をふまえた過去の記事となります。ご了承ください。
質問
Q.将来、日本語教師として海外で働きたいと思っていて、今年の10月の日本語教育能力検定試験を受験するつもりなのですが、その場合、養成講座420時間の受講と試験の勉強を同時にするのがいいのか、それとも試験まで時間もそんなにないですし試験の勉強に集中し、合格すればその後、養成講座420時間を受講するのがいいのか迷っています。そもそも日本語教育能力検定試験を何度も受講する人はいるのでしょうか?だいたいみなさん、どのくらいで合格するのでしょうか?
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回答
A. はい、下のグラフを見てもわかるように、日本語教育能力検定を何度も受験する人は普通にいますので珍しいことではありません。
受験が2回目の人は毎回20%程度(受験者の5人に1人程度)いますし、3回、4回と受験する人も、それぞれ5~10%程度、毎回いらっしゃいます。
日本語教育能力検定試験 全科目受験者 受験回数比 推移
http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm JEES日本国際教育支援協会 webより
合格する人は2回以内に合格している?
上記表を見てみると、3回目と4回目の受験者数がほぼ同数であることから、合格する人はだいたい2回目以内には合格し、3回目受験する人は、4回目も受験することになる・・・もしくは2回受験して不合格だった人は、3回目以降の受験は諦める傾向がある・・・との推測を立てることもできるかと存じます。
検定合格を諦めた人は、同じく日本語教師の有資格者とみなされる「420時間の養成講座修了」のほうへ切り替える方が多いようです。
JEGSへのお問合せからうかがえるのは、だいたいみなさん、1回目は独学で受験してみて、それで駄目だったから、こちらの検定対策を含んだ通信講座などを受講して2回目の受験に備え、1月ぐらいから講座の受講を始める、という人が多いようにお見受けいたします。
先日、初めて日本語教育能力検定を受験しましたが、勉強の仕方や、教材の選び方もまずかったのか、うまくいきませんでした。今度こそパスして、実現にむけてにスタートを切るつもりです。そこで実践も考えてぜひ通信教育を受けたいと思っています。検定一本で絞るとどこか不安で、保険を掛ける意味でも420時間も抑えながら学習を進めたほうが自分にとって不安解消になりそうです。
といった声や、
A社の通信講座を受講しながら日本語教育能力検定試験を先日初めて受験しましたが、試験を終えてみて、まだまだ勉強不足だと痛感いたしました。また、自分にとっては、もっと総合的に学習した方がよさそうな気がして文化庁の420時間の学習内容も勉強でき、なおかつ検定の勉強にもなるものを探していてこちらのHPにたどりつきました。
といった受講動機が寄せられています。個人差もあることですが、どちらかというと、検定に絞ってガツガツ勉強するよりかは、一度、420時間のカリキュラムで総合的に見直したほうが、結果、「急がば回れ」でそれが検定合格への近道になる場合も多いようです。日本語教育能力検定試験は、実際に教えるという視点や、教えた経験、総合的な視点や知識などがないとどうしても理解できない出題もあるためです。
※多数回受験者はプロ(業者)の可能性あり
3回目と4回目の受験者数はあまり変化がないことが、上のグラフからもわかります。このことから受験回数が3回以上になっている人は、プロ(業者)の可能性が高いことが考えられます。こちらの日本語教育能力検定試験【通信講座】合格者の声のQ&Aでもご紹介していますが、検定試験は、
- 試験問題をいち早く入手したい業者(検定対策講座を実施している会社や個人など)
- 何回も合格したことをネタ(自慢)にして稼ぎたいブロガーやYoutuber、講座講師など
らが受験しており、3回以上受験し続けている人は、訳ありな人たちである可能性が高いです。
このことから、結局、一般人に関しては2回目以内に合格している人が多い(または3回目以降はあきらめる人が多い)ということが推測できます。
検定合格の重要性が増す傾向
平成29年(2017年)以降に実施される検定試験は、受験者の内訳が大きく変動する可能性があります。なぜなら法務省入国管理局による新基準が2017年8月から施行され、法務省告示機関(法務省告示校等、日本国内の日本語学校など)で就労するには、420時間講座修了者は四大卒以上でなければならないとの規定が明文化されたためです。
四大卒以上+420時間講座修了 が1セットの資格
そのため、四大卒に該当しない人が420時間講座を修了しても(法務省告示機関での有資格者としての)意味がなく、検定受験のほうに多く流れ込んでくることが予想されるからです。(一応、規定上は、検定に合格さえしていれば学歴は求められないためです。)
または、検定以外の手段としては、高卒や短大卒の方が、法務省告示機関で日本語教師として就労するには、四年制大学に入り直すか、通信制その他何らかの形で四大卒の資格を取るしかありません。
マイペースに受験すればよい
検定の受験者には、「とりあえず受けてみよう」といういわゆる「冷やかし受験者」や、すでに有資格者(420時間を修了または大学で日本語教育を主/副専攻者)で、「そのうち合格すればいいや」的な単純に力試し目的で受験している人もいますので、必ずしも上記グラフの数字が受験者全員に該当する、というわけではありません。
また、検定の難易度(検定の合格率)自体は毎回、20~25%程度内で安定的に推移していますし、何度も受験している人は実際にいるわけですから、(受験料も1万円程度ですし、もちろん命が奪われるわけでもないので)それほど慌てる必要はなく、落ち着いてマイペースで試験に臨まれるとよいでしょう。
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